Ⅱ ~ショウside~

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しかし、その名は無かった。 いくら見直しても知らない名ばかりで 僕は思いきり文芸誌を閉じた。 割り箸を弁当の側面に置き 脱力感に身を任せ天井に向かって深い息をつく。 諦めた方がいいと突き放す自分と まだ二年あるんだからと慰める自分がいた。 周りと同じように就活を始めた方が良いのだろうか。 でも同じくらいに そんな呆気なくていいのかとも思う。 ...いったん今は忘れよう。 ふと紙袋が目に入り、 吸い寄せられるように僕は中身を取り出した。 女性から花を貰うのなんて初めてだった。 プライベートはもちろん、 こういったお客からも今までで初めてだ。 そんな事を言うとまるで沢山のお客の相手を してきたように聞こえてしまうが それほど長く雇われている訳では無い。 たしか、3ヶ月ほど前だった気がする。 突然杏香さんが現れ、働かないかと持ちかけられたのは。
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