Ⅱ ~ショウside~

12/25
前へ
/147ページ
次へ
僕は目の前に座る名すらも名乗らない相手に 素性をバラされたような気がして 何を言ったらいいのか分からなくなった。 なんだかどうでもよくなり 僕は目線をパソコンに戻すと それを阻止するかのように 彼女は手をパソコンの上部に引っかけた。 レースから透けて見える爪も黒く塗られているようだった。 反射的にそちらを向くと彼女は薄く笑った。 「そういう用心深い所も気に入った。 簡単に食いつく男なんかより断然に魅力がある」 彼女は僕が視線を離す事を許さなかった。 「.....何なんですか、一体」 「何でしょうね。別に大した事じゃないわ。 ただ確認しに来ただけよ。 あなたにスカウトするだけの価値があるかどうかを、ね」 こちらの反応を観察するような視線に 段々と面倒くさくなってきた。 意味が分からないです と素っ気なく言い またパソコンへ視線を戻そうとしたが、 瞬時に彼女の手によってパソコンが音を立てて閉じる。 ちょっと と思わず声を出た。 「私の元で働いてみない? そこら辺のアルバイトより断然良い。 どうせ就活もまともにしていないんでしょう」 そう彼女が足を得意気に組みかえると 僕のアイスコーヒーの氷がカランと鳴った。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加