Ⅱ ~ショウside~

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「...何で、言いきれるんですか? 僕はお客の前で話せないかもしれないのに。 変ですよそんなの」 すると彼女は可笑しそうに笑った。 「いいえ そんなはずない。 あなたみたいなタイプは幾らでも殻を(かぶ)れるの。 一度体験すれば分かるはずよ。 お客様の持っている魔法のようなものが」 彼女はそこまで言うと名刺サイズの紙を僕の前に置いた。 BARらしき名前と住所、電話番号が書いてあったと思う。 「明日、ここに来てちょうだい。 どの時間でも別に構わないわ。 あ、...名前だけど杏香だから好きに呼びなさい」 言い終わってすぐ ガタリと椅子から立ち上がるから 「いや...まだ働くだなんて...!」 とたまらず言った。 が、軽く無視された。 そのままひらひらと手を泳がすだけで 振り返りもせずにカフェを勝手に出て行ってしまったのだ。
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