Ⅱ ~ショウside~

17/25
前へ
/147ページ
次へ
** 美帆子さんが僕に予約を入れたのは あれから3週間が経とうとしていた頃だった。 待ち合わせは11時からで 場所は自由が丘駅前と連絡が来た。 当日、僕は電車で向かい 時間ぴったりに駅前に着いた。 遅れるのは言語道断、逆に早くてもいけない。 それが杏香さんの教えだった。 人でざわついている中、 気品が溢れている美帆子さんは僕の中で目立っていた。 「こんにちは」 驚かせないよう正面にまわってから 話しかけると美帆子さんは軽く会釈をして 「久しぶり」 と柔らかく頬を緩ませた。 そして少し照れたように目を伏せ 「ショウくん人気者なのね。 いつでも会えるなんて思っちゃってた」 なんて言った。 「...もしかして僕と予定合わせにくかったですか」 自分自身、売れる事に執着してないため 気にしていなかったのだが最近は結構埋まっていたかもしれない。 「ううんきっと私の融通が効かなすぎなの。 だから気にしないで」 ニコリと顔を上げ 行きましょうと微笑む美帆子さんの手を 危うく繋ぎとめようとして 慌ててセーブする。 自分にこの仕事は向いていないのかもしれないと 彼女の隣にいるとどうしても思う。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加