Ⅱ ~ショウside~

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歩き始めて何分か経った頃、 美帆子さんは あそうだ と何かを思い出したかのように僕を見上げた。 彼女の束ねた後ろ髪に付いていたバレッタを 眺めていたから、流れでパチリと視線が合う。 動揺を上手く隠し、どうしました? と訊ねると 美帆子さんは足を止め 僕の服装をひと目で確認してから やっぱり何でもなかった と小さく笑った。 「ショウくんとの予定を確認する時にね 私すっかり服装の事を忘れてて。 今から行くレストラン、ちょっとしたドレスコードがあるの。 でも、ショウくんばっちりだったから」 嬉しそうに言う美帆子さんの顔に 段々と照れがみえてくる。 「...それに、もしもの時は 私が買ってあげようって勝手に思っちゃってて」 続けて 何言ってるんだろうね私 と恥ずかしそうに首を傾げ そそくさと歩き出してしまった。 僕は後を追いかけて隣に並び 「美帆子さんならきっと僕に似合う服 選んでくれそうですね」 と言った。 すると美帆子さんは 「じゃあ今度ね」 ふわりと笑った。 僕にはそれが嬉しそうに見えた。
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