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「今日は美帆子さんの事、聞いてもいいですか?」
メイン料理の子羊のローストが運ばれてきた頃、
僕は訊ねてみた。
肉の焼き目にナイフを当てた美帆子さんが顔を上げる。
「...私?...いいよ面白くないかもしれないけど」
「えっと、...じゃぁ、美帆子さんは子供の頃
どんな子供だったんですか?」
すると美帆子さんはナイフを入れる手を止め
少し声を出して笑った。
今日の中で一番いい笑顔かもしれない。
「ごめんね 急に笑いだして。
...ショウくん、凄くかしこまった顔で言うんだもの。
なんて聞かれるのかと思ったら、ね?」
余程 真剣きった顔で訊ねていたのだろうか。
途端に恥ずかしくなって僕は水を飲んだ。
美帆子さんは落ち着いてきたのか
ふぅと満足気に息をついてから口を開いた。
「子供の頃かぁ。
......そんなに大人しい子じゃなかったかも?」
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