Ⅰ ~美帆子side~

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正成の飲み残したコーヒーをシンクへ流し 綺麗に洗って元の場所に戻す。 そして自分用に紅茶を入れる準備をした。 小さめのティーポットに茶葉を入れお湯を注ぐ。 この茶葉も取り寄せたものでイギリス産の選りすぐり。 飲むのは私だけだが、それでも 彼は質の高いものしか買わせない。 自分の妻には良いものだけを飲ませたいのか、 誰が見ても上品な妻であって欲しいのか その辺に売っているものを口にするなと 結婚をしてからずっと言われ続けている。 いつの日か、茶葉を切らしてしまい 今日だけならとティーパックで済ませている所を見られた時すら彼はいい顔をしなかった。 彼はそういう人だ。 私の午前中は紅茶を飲んで過ごすのが基本。 でもそれは他にやる事が無いからであって 言ってしまえば暇なのだ。 結婚して仕事を辞めろと言われてからずっと専業主婦。 当たり前だがお金には困らずとても裕福と言える。 でも家に一日中いるよりも少ない時間でいいから 働きに出たいと持ちかけた事があった。 でも正成は聞く耳持たず猛反対をした。 『美帆子は社長婦人でもあるんだ、 趣味は多くてもいいが仕事はさせない』と言われてしまったのだ。 そう言われてしまってから 仕事をしたいと言うのをやめた。 思うだけも無駄なのでそれもやめた。 彼がそう望むのだから従うしかないのだ。 言うことを聞いて、夫に尽くす妻を彼は求めているのだと思う。 だから口ごたえも一切と言っていいほどにしないし、 言われた言いつけは全て守ってきていた。
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