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目の前にはグツグツと音を立てる
ビーフシチューの鍋があった。
ゆっくりとかき混ぜれば
照りがキッチンのライトに反射する。
これは正成の好物だった。
若い男と会ってきた夜に夫の好物を作るだなんて
私はいつからこんな女になってしまったのだろう。
やはり今日はどこかおかしいのだ。
オープンキッチンから誰もいないリビングを見渡し、そう思った。
私は出したままの赤ワインに気づき
そっと手に取って冷蔵庫へ戻す。
パタリと閉まる冷蔵庫のドアの音が
自分の鼓動と重なり、一瞬胸が浮き上がった。
驚いた と思った。
今日のショウくんは、何だか違って見えた。
私の記憶は、今日のお昼に遡っていく。
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