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遠くの方で物音が聞こえる。
ぼやけた意識の中で、コーヒーっぽい匂いが鼻をくすぐった。
暖房ではない、湯気に似た温もりを感じ、眠っていた目を擦り頭を上げた。
「…あ、起こしちゃった?ごめんね」
僕が普段ろくに使わないキッチンから美帆子さんが振り向きざまにニコリと笑った。
その笑顔を見た途端、昨夜の行為がフラッシュバックして下半身が反応しかけ、落ち着けと言い聞かせた。
腰には嫌ではないだるさが残っている。
美帆子さんは既に昨日着ていた洋服に着替えていて、貸したスウェットは店のように綺麗に畳まれ置かれていた。
その隣に僕が脱ぎ捨てたスウェットも畳まれていて、今自分がボクサーパンツしか身につけていないことを思い出す。
「コーヒー、飲む?…でも寝起きだと重いかな」
「いやっ、頂きます」
即座に返すと そう と柔らかく目尻を下げ、またキッチンに向き直った。
どうも昨夜の事がチラついてしまい、冷静で居られなかった。
まともに顔が見られない。
とりあえず何か着ようと畳まれたスウェットに手を伸ばした。
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