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「なぁ、光雅。高等部卒業したら、どうするんだ?」
「う…ん。ちょっと悩んでいる」
珍しく歯切れ悪く、光雅は悩んでいた。
「進学先か? 光雅のレベルなら、都心の大学の方が良いよな?」
心が少し痛んだ。側にいて欲しいと思う反面、開放を望むオレの矛盾した願いは、心を締め付ける。
しかし次の瞬間、光雅の口から出たのは予想もできない言葉だった。
「…本音を言うなら、留年したいんだけど」
「んぐっ!」
おにぎりが変な所に詰まった! 慌ててお茶を飲み干す。
「ごほっがはっ。なっ何バカ言ってんだよ! 何も問題なく進級・卒業できるだろうがっ」
「でもホラ、高校で留年するのが一番良いんだよ」
「何が、どこが良いんだよ!」
「義務教育中では不可能だけど、高校なら留年できるだろう? そうすれば綾と同級生になれるし、そしたら大学も同じ時期に入れるじゃないか」
…コイツ、本気で言ってる。
眩しい笑顔で楽しそうに語る光雅は、決して冗談を言ってはいない。本当に、そう思って、考えているんだ。
「だからしばらく休学しようかと思って」
「…はい?」
「休めば出席日数が足りなくて、留年ってことになるだろう?」
「……休学の理由は?」
「それはまあ、後からどうとでも」
なるだろうな、コイツなら。
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