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携帯電話でゲームをして時間を潰していた。
「それじゃ行こうか」
「ああ」
カバンを持って立ち上がるも、心の中の不安は大きくなるばかり。
両親の新しい店は、駅前に出来ていた。白い外壁と、派手な看板はすでに見慣れた会社のロゴ入り。
駅前はかなり発展している。そんな場所にこんな大きな店が作れるほど、繁盛していたのか。
まあ二人ともすでに事務所に住居があるし、マンションには週に一度でも帰ってくればマシな方。この放任主義、案外光雅のせいとも言えるかもしれない…。
「オープンして間もないけど、今の時間帯なら落ち着いているみたいだな」
「…ああ」
笑顔の光雅の後ろを、重い足取りでついて行く。できることなら、今すぐにでも帰りたい。
しかし運動神経抜群の光雅に捕まり、引き戻される可能性は圧倒的に高い。絶望的な賭けをするほど、オレは無謀じゃなかった。
店内に入ると、店員達の視線が一気に光雅に集まる。一瞬の間を置いて、すぐに店員達は光雅の元へ駆け寄ってきた。
なのでオレはすぐに光雅から離れ、壁に背を付けた。あのまま側にいたら、確実に弾き飛ばされただろう。…過去にそういうことが、実際にあった。だから経験を重ねているうちに、オレの条件反射はかなり鋭くなった。
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