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「いらっしゃいませ、お客様!」
「本日は何をお求めですか?」
「現在、オープニングサービス中でして…」
うわぁ…。老若男女、ワラワラとよくもまあ集まれるものだ。
学院ですでに見慣れた光景とは言え、違う場所で見ると、改めて引く。ここは羨ましいとは絶対に思えない。
「おや、光雅くん、いらっしゃい」
「光雅くん、来てくれたのね!」
そこへ、オレの憂鬱な気持ちの原因がやって来た。
「こんにちは、おじさん、おばさん。繁盛しているようで、何よりですね」
オレの実の両親だ。しかし二人はオレに気付かず、満面の笑みで光雅に近寄る。店員達が道を開ける。…何だかこういう光景、前に見たことがある。ドラマか映画だったかな?
「来てくれて嬉しいよ。今日は買い物かい?」
「欲しい物があったら遠慮なく言ってね? お金のことはもちろん気にしなくて良いから」
と、オレの存在は完璧蚊帳の外で、話は進む。思わず深いため息が漏れる。
「はー」
もうこの光景も見慣れてしまった。子供の頃はそれなりに傷付いたりもした。しかし慣れとは恐ろしいモノ。いや、悟りと言った方が正しいのかもしれない。
もうこの両親には期待しないでおこうと決めた時、両親がオレに期待していないことも悟った。
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