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どう足掻いたって、上という光雅の存在がいる。
だからオレはダメなんだって、二人の中では決定付けられていることを、オレは気付いてしまった。
だからもう…二人には親としての愛情なんていらない。二人がすでにオレに期待していないように、オレも止めたんだ。愛情を求めることを―。
「今日は綾の私服を買いに来たんですよ。今度の食事会で着る物をね」
そう言って光雅が壁にいるオレに視線を向けて、やっと二人は気付いた。
「おや、綾。そんな壁際に何でいるんだ?」
「そうよ、こっちいらっしゃい」
二人に手招きされて、オレは背を浮かせた。
「久し振り。二人とも元気そうで何より」
「お前もな。まあ光雅くんに任せているから、大丈夫だろうがな」
「光雅くん、しっかりしているから」
そう言って話しかけるのは光雅に向かって、だ。
…こんな光景を望んで見たくはなかった。
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