436人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「まあ忙しいみたいだしな。今日行けば、顔を合わせられるかもしれないぞ」
「ぜってーイヤだ」
「まあまあ。とにかくボクはちょっと用事があって遅くなるけど、教室で待っててくれ」
と言うが、オレに拒否権はない。
「…分かったよ」
だからこう答えるしかない。
光雅は満足そうに頷き、空の食器を片付け始めた。
そして二人そろって登校する。マンションから学院まで、歩いて十分。
しかし途中で、同じ学院の生徒達は光雅を見ては歩みを止め、頭を下げて挨拶をする。
「おはようございます、会長」
「おはようございます、真宮生徒会長」
「ああ、おはよう」
対して光雅も笑顔で返事をする。
「あっ、安恵やすえさんもおはようございます」
「安恵書記、おはようございます」
「おう、おはようさん」
オレにも気付き、慌てて挨拶をしてくる。苦笑しながら手を振り、挨拶を返す。そりゃこんなカリスマオーラバリバリの光雅の側にいたんじゃ、オレの存在も薄れるよな。
校舎に着くと、オレは声も無く安堵のため息をつく。ここで一旦、光雅から逃げられるからだ。
「それじゃあ綾、ちゃんと授業を受けるんだぞ」
「分かってるって」
光雅は少し寂しそうに微笑みながら、オレの頭を撫でる。
「それじゃあ昼休みに」
「ああ、生徒会室に行くから」
最初のコメントを投稿しよう!