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色素異常の真っ黒な右眼から流れた涙は赤かった。まるで血の涙のようだった。この辛い体験のあと、少女は自身の能力を開花させる。
突如として両親を失った少女は親戚中をたらい回しにされる。
たらい回しにされ何とか生き延び行き着いた先が、とある喫茶店だったのだ。
当時の店主は30代前半にして、とある喫茶店の二代目店主となったばかりの頃だった。
店先に幼気な少女が座り込んでいる。しかも体育座りで、体操着を着用していて、ランドセルにはリコーダーが刺さっていた。
「嬢ちゃん…そんなところに座っていないで、中においで」
店主は少女に優しかった。この店主、些か問題があった。困っていそうな人を見つけると、どうしても手助けしてしまう性分だった。
しかし少女は頑なに店の中に入ろうとはしなく、その表情は怯えていた。
親戚中をたらい回しにさせられ、疫病神扱いを受け、人間に対する信頼を殆ど失っていた。そんな矢先に店主との出会いがあったのだ。
「仕方ねぇなぁ…ちょっと待ってな、美味いもん持ってきてやるから」
店主が店から持ってきたのが、玉子焼き入りのサンドイッチだった。
「ほらよ、食いな…なんだ?毒なんか入ってねーぞ?ほら、温かいミルクも飲むか?」
少女はコクリと頷いた。やはり人間不信に陥っても、空腹には勝てなかったのだ。
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