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店先でホットミルクとサンドイッチを食す少女。
食べ終わった頃を見計らって、店主が少女に声をかけた。
「嬢ちゃん、訳ありかい?」
「…うん」
「お、やっと口聞いてくれたか、可愛い声じゃないか…喋らないのが勿体ないなぁ」
「声…可愛い?初めて言われた…」
これが後に『痛み請負人』となる彼女と店主の出会いだった。
親でもなければ子でもない。でももし親子関係にあるのなら、そのくらいの年齢差。
「…美味しい食事を与えてくれて感謝します…」
「良いってことよ。それより嬢ちゃん訳ありだろ?理由も名前も聞かなねぇし、学校に行けとも言わねぇ。ここに好きなだけ居ても構わねぇ」
「…どうして?」
「困ってんだろ?なら助けが必要だろ?つっても、人間てのは勝手に自分が助かるだけだがな…嬢ちゃんにはまだ難しいか」
「…手…」
「お?なんだ?握手か?ほれ」
店主の手を握った途端、少女の中に映像が流れてきた。
この店主、交通事故で奥さんと娘を亡くしている。それをまだ清算できずに引きずっている。
少女は眼帯越しの右眼から赤い涙を流した。
「悪いな、痛かったか?」
「ううん…私、痛いの分からないから…」
少女がランドセルから取り出したのは診断書のコピーで、そこに書かれていたことを見た店主は驚愕した。
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