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「右眼が色素異常…痛覚麻痺…怪我に注意?」
「お化けなの…だから、人間の貴方は関わらない方が良い…」
店主はその場に崩れるようにして泣き、少女を抱きしめた。
少女の年齢にしてこの口調、人を信用したいのに信用できていない様子、人を遠ざけるのは自分が傷つかなくて済むから…などと、店主の頭には色々な思考が駆け巡った。
少女は口外しなかった。店主の抱えている問題が見えてしまったこと、それを清算しきれていないということなど。
この出会いを経て、少女はとある喫茶店の二階部分にある住戸スペースで生活になることとなった。不思議な共同生活である。
店主は亡くしたばかりの娘の面影を重ね、少女は亡くしたばかりの父親の面影を重ねていた。
それ以降、店主が喫茶店の仕事をしているときは、少女も手伝うようになった。学校にはいっていない。未就学児だ。
でも少女はそれが良かった。学校へ行っても、また転校したとしても、自分の名前を語る以上は過去が付いて回るし、差別の対象になりやすい状況にある。学校に行かなくても生きていけると思っていたのだ。
「あの頃は、お互い大変だったな、嬢ちゃん」
そして現在。未だにお互いの名前は知らないまま、十数年経過している。
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