痛み02

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「大丈夫、契約違反はしないから、安心して良いよ」 彼女は戸惑っていたが、やはりシュークリームには勝てなかった。 「へぇ、変わった名前してるねぇ」 「ペンネームっていうか、通り名というか…まぁ、本名ではないですね」 「なるほど、そういうことなら、あいつともウマが合いそうだな」 手土産女のペンネームを、SYU(シュウ)という。SYUもシュークリームが好物である。それから文字ってSYUにしたとかしないとか。 「で、SYUさん、どういったご要件で?」 「ええ、こういう仕事しているので…という堅い話をしにきたのではありません。半日でも良いので、お嬢さんを貸してもらえませんか?」 「…というと?」 「美味しいものを食べに行くんです。電話口でも約束しましたからね」 勝手に言って、勝手に電話を切っただけだが、SYUは約束したと勘違いしている。しかも先日のお礼なので奢るとも言っている。 ここは店主が確認するより他ない。 「おい、あー言ってるが、どうするんだ?」 「美味しいものを食べに?」 「そうだ。俺ぁ、長年色んな人を見てきたから言うが、悪いヤツじゃなさそうだぞ」 「行っても良い?店主寂しくない?」 彼女は見透かしていた。自分に亡くなった娘の面影を重ねていることを。     
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