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「大丈夫、契約違反はしないから、安心して良いよ」
彼女は戸惑っていたが、やはりシュークリームには勝てなかった。
「へぇ、変わった名前してるねぇ」
「ペンネームっていうか、通り名というか…まぁ、本名ではないですね」
「なるほど、そういうことなら、あいつともウマが合いそうだな」
手土産女のペンネームを、SYU(シュウ)という。SYUもシュークリームが好物である。それから文字ってSYUにしたとかしないとか。
「で、SYUさん、どういったご要件で?」
「ええ、こういう仕事しているので…という堅い話をしにきたのではありません。半日でも良いので、お嬢さんを貸してもらえませんか?」
「…というと?」
「美味しいものを食べに行くんです。電話口でも約束しましたからね」
勝手に言って、勝手に電話を切っただけだが、SYUは約束したと勘違いしている。しかも先日のお礼なので奢るとも言っている。
ここは店主が確認するより他ない。
「おい、あー言ってるが、どうするんだ?」
「美味しいものを食べに?」
「そうだ。俺ぁ、長年色んな人を見てきたから言うが、悪いヤツじゃなさそうだぞ」
「行っても良い?店主寂しくない?」
彼女は見透かしていた。自分に亡くなった娘の面影を重ねていることを。
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