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オムライスの店を後にして、二人はショッピングをすることとなった。それは、痛み請負人のためであった。
黒いジャージに黒いパーカー。基本、黒を基調とした服装な彼女のために、SYUが自腹を切ると、奢ってやると言い出したのだ。
「そこまでしてもらうのは悪い。自分のものは自分で買う」
そんなこと言っておきながら、今日は奢ってもらう予定だったので、財布など持っていない彼女は、すぐさまSYUの袖を掴み泣き言を言う。
「お財布…家…」
「良いのよ、買ってあげるって言ったじゃない。気にしないで」
SYUの厚意に甘えることにした。
「どんな可愛い服にしよっか?」
「黒!」
「あ…黒が良いんだ…なんで黒なの?」
「何色にも染まらないから…」
痛覚麻痺の彼女は、他人の痛みを請け負うことで生計を成り立てているが、痛みを感じるわけではない。
感じるのは苦しみや悲しみなどの感情がメインである。依頼主からは痛みが無くなる。
その痛みが感情と共に彼女を襲うが、都合よく痛覚麻痺なため、痛みは感じない。
それを比喩してのことか、何色にも染まらないから、などと言っているのである。
「これが良い…」
「(可愛い…でも20代が着るような…)うん、良く似合うね」
SYUは思っていたこととは別のことを伝えた。
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