一人作業にて

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一人作業にて

切断機。扱うには技術や経験の他にも、心構えが必要になる。 しかし長年同じ作業を繰り返していると、必ず心の隙は生まれる。 町の工場に勤めて10年にもなると、自他共にベテランと言われる。 だが事故は誰にも予測できない。それはどんな人間でも不可能なのだ。 だからこそ、彼も決して油断してはいけなかった。 ―その日、彼は夜勤をしていた。 彼の仕事は古くなったダンボールを切断することだった。 汚れがヒドイものや破れたりしたダンボールを一度切断し、再利用するのが彼の勤める工場だった。 彼はその夜もいつものように切断機の近くにいた。 夜勤に出ている従業員は他にもいる。 だが彼はベテランと言える経験があったので、一人で作業部屋にいた。 大きな機械が一定のリズムで動く。 ダンボールは自動的に流れて、切断され、山になっていく。 彼の役目は機械が正常に動いているかのチェックと、不良ダンボールを時々追加することだ。 例え機械のトラブルがあっても、別の作業部屋には直す人間がいる。 大した動きが無い作業は警戒心を薄くさせる。 だから彼もつい油断してしまったのだ。 突然、事故に会う可能性を…。
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