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『また後輩を泣かせたの? 罪な女だねえ』
莉子に笑い飛ばして欲しい気もしたが、
今回ばかりは桜井ひまりに悪いと思う気持ちが先に立った。
いままでの女の子たちには悪くない、というわけじゃないけれど、彼女は少し愛らしすぎた。
このピンクの封筒のふわふわウサギみたいに。
『先輩のこと、好きなんです。真剣なんです』
あの子、声まで可愛かったな。あたしは封筒をカバンに仕舞った。
桜井ひまり、なんて名前まで可愛い。まるでそのまま、どこかのアイドルみたいだ。
嵯峨野晶なんて男みたいな名前のあたしとは、
きっと生まれたときから天地ほどの差があるに違いない。
もう一度大きなため息をついて空を見上げると、そこにはふわふわウサギみたいな雲が流れていた。
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