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「えっ? 嘘、冗談でしょ?」
美咲と付き合うことにした、そう報告すると、莉子は椅子から転げ落ちんばかりに驚いた。
付き合っちゃえって言ったのはそっちじゃん、あたしはむっとする。
すると、莉子は慌てたように付け足した。
「いや、別に悪いって言ってるんじゃないよ? ただびっくりしたから……で、本気なの?」
「まあ、そういうことだから」
あたしはそう言うと、逃げるように教室を出た。
「ちょっと待ってよ……」
莉子が追いかけてくる。その足がぴたっと止まった。教室の外で、美咲があたしを待っていたのだ。
「先輩、一緒に行きましょ」
そう言うなり、腕を取る。
その仕草に恥ずかしくなりながらも、結果的にイエスと答えてしまったのは自分なのだ。
とりあえず、我慢する。
「晶……」
莉子が目を丸くしている。
廊下の生徒たちも、こそこそと囁き合っている。
赤いリボンの一年生がビッグニュース! と言わんばかりに階段を駆け下りていく。
「先輩って、数学得意ですか? 私、全然ダメでー、だからテスト勉強、一緒にしません?」
美咲は周囲の様子を気にもせずに、他愛のないおしゃべりを始めている。
それに相づちを打ちながら、あたしはこの状況を悪くないと思っている自分に気づいた。
「……先輩?」
美咲が可愛らしい上目遣いをする。あたしは小さく首を振って、彼女の話に耳を傾けた。
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