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美咲と付き合い始めて一ヶ月。
『恋人同士はデートするものです!』
あの妙に強引なテンションに押されて、
あたしは待ち合わせの駅前でそわそわと彼女を待っていた。
服装はジーパンにTシャツ。
季節感なし、可愛さなし、かといってカッコイイわけじゃなし。
けれど、これ以上手持ちの洋服ではどうしようもないのだ。我慢してもらうしかない。
「あ、先輩!」
そのとき、聞き覚えのある声がして、改札から美咲が駆けてくる。
あたしの格好を見ても、何も気にしてない様子だ。
よかった、ほっと胸をなで下ろす。
同時に、あまりに可愛らしい彼女の服装に思わず釘付けになった。
まるでピンクのふわふわウサギだ。
最初に頭をよぎったのはそんな感想だった。
普段は耳の下で結ばれている二つ分けの髪は、垂れ耳ウサギのような高い位置で結ばれている。
細い首元までボタンで留められたブラウスは上品で、
その上にふわりと羽織られた桜色のカーディガンと紺のスカートも均整が取れている。
「どうしたんですか?」
甘い香りさえ漂ってきそうな姿にくらくらしていると、美咲は小首をかしげた。
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