桜だけが知る恋

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「なるほど雪が降るなかの桜か、相変わらず渋い題材をチョイスするなぁ」 「先生は来年も満開のこの桜を見られるんでしょうけど、その頃には私はもう卒業してしまってますから」 「こんな小さな写真部でよければ、OGとして後輩達を教えに来てやってよ。顧問がこんなだからね、頼りになる部長がいなくなっちゃうのは心配だなぁ」 「みんな頼りにしてますよ、先生」 少なくとも私は先生に、そう言いかけて飲み込んだ。 「大学での活躍も期待してるよ、エース」 私が欲しいのは、頼りになるなる部長でもエースでもなくて。マフラーに顔を埋めて身体の中の煩い想いを抑え込む。 「...ありがとうな」 子供を諭すような、優しい声だった。 何に対してのありがとうかは聞かない。 ただ込み上げてくる想いに、冷たい雪がそっと触れて、じゅわ、と音を立てて溶けた。
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