第1章

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B「君はなんの写真をとってるの?」 僕は公園でカメラを構えている女子高生に声をかけた。 不審者と思われないかと心配にはなったけど、彼女がカメラのファインダーをのぞいたままシャッターを押している気配がないからどうしても気になった。 A「なんだと思います?」 逆に問いかけられてしまった。 B「何だろう?景色?人?」 A「どれも正解で不正解です」 B「どういう事?」 A「このカメラ、フィルムは入ってるんですけどシャッターが押せないんです」 B「じゃあ何も撮れないんだね」 A「いえ、それがちゃんと撮れるんです」 どういう事だろう。 オカルティックな話になるのだろうか。 A「私の心の中に、見たものが残ります」 B「ははっ!なるほどね」 そのあと彼女にカメラを見せてもらうと、ただ単にフィルムが巻いてないからシャッターが押せなかっただけの事だった。 祖父母宅にあった古いカメラらしく、現代っ子には使い方が分からなかったらしい。 古いものは忘れ去られ、新しく便利なものが使い捨てられる。 誰か一人でも覚えていてくれるように、彼女にはそのカメラで写真を撮り続けて欲しいと思った。
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