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 手を伸ばし、短く切り揃えられた襟足をそろり撫でると驚いたのか、びくり、彼の体が小さく跳ねた。お猪口に酒を注ぎ終わってから、顔を上げて、少し非難がましい表情を見せた。 「こぼれてしまいますよ、脅かさないでください……」 「髪、切ってしまったんだね」 「えぇ、ちょっと」  満たされたお猪口を口元に持ってゆき彼から目を離さないままで一口、酒を口に含み、無言の視線で話を促させようとしたが、やはり彼の方が客人の相手に慣れているからか、この場が無駄話をする場ではないからか、そんな駆け引きなど要らないという様に薄く微笑んだまま見つめ返された。貴方のしたいようにしてください、とは言われたが、そういうことなのだろう。聞きたかったら素直にそう言えばいいだけのことだ。 「どうして?」 「お客に切られたんです」  何口か手元の酒を飲んで残りが少なくなると、また注ぎ足された。手元に視線を落として瞼を軽く伏せると睫毛が目元に影を落とした。口元は緩い曲線を描いて笑っている。 「そんな、酷い……綺麗だったのに」 「そういう事をしたがる方もいますから。やはり、(はなぶさ)さんは髪の長い方がお好きでしたか」 「やはり、って?」     
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