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「祐ちゃん、もういいよ。シロのお散歩もあるでしょ」
「じゃあな、明日またくるよ。それと商工会にはおれの方から連絡をいれとくから」
私の右腕には点滴の針が刺さっている。聞こえるはずもない点滴筒に落ちる滴の音が命を終えるその瞬間までの時を刻み始めた。私は祐ちゃんの背中に思いを投げかけた。祐ちゃんに涙は見せまいと。
祐ちゃんが病室を出て三十分ほどで夕食が運ばれてきた。テレビ画面でみた内容と同じである。患者の容態によって違うメニューが各部屋番号に合わせて配信されている。退屈な入院生活では食事を唯一の楽しみにしている患者への配慮なのであろう。
少し食欲が落ちるかもしれないと看護師が言っていたが私は全てを美味しくいただいた。
「今頃、祐ちゃんはシロとお散歩かな」
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