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ボランティア仲間のおじさんやおばさんが盛んに私たちをひやかしてくる。そんなことはお構いなしに祐ちゃんは美味しそうに全てを平らげる。一メートル七十センチほどの身長に六十五キロほどの体重。二人前ほどのお弁当が、どこに消えてゆくのかと思うほどの食いっぷっりだった。それを眺めている私の顔が緩んでいるのが自覚できる。
「亮子ちゃん、作り甲斐があるわね」
「ほんと。今の若い人は羨ましいわね」
おばちゃんボランティアたちが私の締まらない顔を眺めながら微笑んでいる。そんないつもの光景が繰り返されて半年。
「亮子さんこれ」
「えっ、なあにこれ?」
今日は私の三十三回目の誕生日である。祐ちゃんが差し出した大きな包みには赤いリボンが付いている。中身はわからないにしても誕生日プレゼントであることは直ぐに理解できたし跳ね上がりたいほど嬉しくもあったが、私の乙女心が恥じらいだ。
「今日は亮子さんのお誕生日でしょ。いつもお弁当を作ってくれているお礼も兼ねて」
平然とした顔でプレゼントを差し出す祐ちゃんの方が二歳も年上の私なんかよりも大人に見える。私は私の顔が火照っているのが恥ずかしかった。
「ありがとう」声が上擦った。〈ゴクッ〉音が漏れないように気にしながら生唾をのんだ。
「今、開けてもいい?」自然な笑顔だけを祐ちゃんに見せながら言えた。しかし、なぜか祐ちゃんの顔が、笑いを堪えているかのように私には見える。
「ああ、いいよ」
私は、赤いリボンに手を掛けた。
「おっ、いい雰囲気じゃないか」
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