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午前の案内を終えたおじさんたちがお茶をのみに休憩室に入ってきた。
「お疲れさま。どう、いいでしょ。祐ちゃんからのお誕生日プレゼント」
少しは気を利かせてよと思いながらも笑顔を振りまくしかなかった。
「えっ」
破れないように気をつけながら包装紙を解くと、黒い漆塗り風の木箱に朱の縁取りが施された仕出し用の弁当箱が現れた。それも一見してプラスチックとわかる安物の弁当箱だった。
「祐治君、次からはこれに弁当を詰めろってか?」
赤いリボンの大きな包みに、飛び上がらんばかりの期待を抱いた私の乙女心はなんだったのか。それに輪をかけるかのようなおじさんたちのひやかし。「亮子さん。ふたを開けて」
私は気落ちした心を見せまいと笑顔を続けている。言われるままに大きな弁当箱のふたを開けると、もう一つの包みが入っていた。黒の筒状の箱にまたもや赤いリボン。黒い箱にはグッチのロゴ。中に入っていたのは絹のスカーフ。黒地に幾何学模様的に白抜きのグッチのロゴが幾つも並んでいる。
「あら、素敵」
「祐治君、奮発したわね」
「亮子さん早く、早く」
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