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私と祐ちゃんとクロとシロ(1)
私と祐ちゃんとクロとシロ
成平 一平太
私の名前は斉藤亮子、三十八歳。旧姓も斉藤。
「あれぇ、亮子って結婚したんじゃなかったっけ?」 他人の不幸は蜜の味ではないが、友人の多くが姓がもとに戻っていると勘違いをする。つまり私をバツイチにしたいのだ。誰もがそうすることで自分を優位につけ、小さな幸せを大きな幸せと錯覚しながら生きているのである。そうした他人(ひと)たちには申し訳ないが、私は幸せの真っ直中に浸かっている。そしてそれは死を迎えるその瞬間まで続く確信が私にはある。
私の愛する夫は斉藤祐治。偶然にも姓が同じであったがために同じ斉藤姓のままとなってはいるが、当然の如く戸籍は移動されている。
二つ年下の夫、祐ちゃんを見そめたのは私。押しかけ女房同然といっても過言ではないのかもしれない。
私も祐ちゃんも産まれ育った小田原をこよなく愛している。
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