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ユウスケの病気を治すためには、北風が体の中に入らなきゃいけない。
つまり、僕の北風の力をユウスケにあげる、ってことなんだけど。
それはフウヤにも、北風の大人達にも分からなかった。けれど、この力は寒い冬の間しか使えない。だからきっと僕の体から抜け出る瞬間があるはずなんだって。
そこで僕とフウヤはその『北風で人間の病気を治した』という噂の真相を探すことにした。
僕たちは毎日噂の出どころを求めて飛び回った。でもこれといった情報は得られない。
ツンドラからやってくる物知りな北風にも聞いたけど、みんな知らないと言う。
さすがに僕もフウヤもそろそろ体力や風力の限界を感じていた頃だった。
北風の大人が、明日この町の上空をシベリア気団が通る。その団長ならきっと何か知ってる。と、教えてくれた。
シベリア気団は、大人の北風でも相当風力がないと会えない寒気団だった。空の上の上をものすごい速さで吹き抜けるんだって。
僕は大人の北風に乗せてもらって、はるか上空を目指した。
北風の力を手に入れたのに、寒くて凍えそうになりながら、さらに上を見上げると大きな風の大群がやってくるのを感じた。
ーーきたぞ
僕を乗せている大人の北風がスピードを上げ、気団に接触した。
「すみません! 団長はどこですか?」
僕は大きな声で大群の1つに話しかけた。
僕を乗せている風や、一緒について来た他の風達も訊いてくれている。
ーーおい、こっちだ
誰かが見つけてくれたみたいだ。僕らは声の方へと急いだ。
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