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僕が風の声を聞くようになったのは、いつからだろうか。
記憶が定まらないバブバブの頃から、風の子守唄を聞いていたような気がするんだ。
そして気がついた頃にはもう、風はいつも僕の隣にいた。
。。
ーーあけて、あけて
北風の子が入りたそうにガラスを叩く。僕が窓を開けてやるとピューっと嬉しそうに入って来て、狭い部屋の中で僕の周りをくるくる回ったり、あっちこっちにぶつかったりと忙しい。
そして扉の隙間から廊下へと一目散に飛び出していった。
北風の子を追いかけ、僕も駆け出す。
「そっちはダメだって!」
暖かいリビングの空気とぶつかった北風の子は、悲鳴をあげて小さな雲を帯びながら天井をぐるりと回った。
僕は急いでリビングの窓を開けた。
「ほら、外に出るんだ」
「何やってるの? ショウヤ!
冷たい風が入って来たわ。窓を閉めて! ユウスケが風邪をひいてしまうから」
お母さんが台所から駆け込んで来た。
ユウスケは、12才の僕より3つ上のお兄ちゃん。
お兄ちゃんだけど、僕らは双子みたいにそっくりなんだ。
同じくらいの背で、同じくらい目の色が薄い茶色で、同じくらい髪の毛が黄色。
違うところは、ユウスケはすぐに風邪をひいちゃうところ。肺の病気なんだって。息をすると、床に砂が散らばるような音がするんだ。
ソファで横になっていたユウスケの咳が聞こえて来た。
「ほらっ!」と、お母さんの大きな声も。
「ごめんね。先に行って。僕もすぐ行く」
小さな声で言って、すぐに窓を閉める。
北風の子は何も言わずに空高くのぼっていった。
空を見上げると、散りじりにされた雲が風に追いかけられていた。
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