5人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
クリスマスが近いこの日は、今にも雪がやって来そうに寒い。
僕は急いでおばあちゃんにもらった水色の毛糸の帽子かぶり、帽子とお揃いのマフラーを首にぐるぐる巻いた。
手袋は誕生日にお父さんからもらった、鹿革のミトン。
用意をすませ、リビングを覗き見ると、お母さんがユウスケに吸引器をあてていた。
ユウスケの、ヒュー!って苦しそうに息を吸い込む声が聞こえた。この声を聞くとクリスマスに殺されるニワトリを思い出す。
僕は何も言わないで、こっそり家を抜け出した。
僕が北風の子と出会ったのは、丘の上の展望台。
ここは風の集会所のような場所で、町を見渡せる高台にポツンと置かれているベンチに座っていると、いろんなうわさ話を耳にすることができる。
例えば、今年は南の風が強いから、今年の北風軍はどうにも風向きが悪い、とかね。
春風がやって来る前に雪を降らせて、ひとあわ吹かせてやろうぜ、とかさ。
たいがい僕は知らんぷりして風たちのうわさ話を聞いている。
そうして、心の中だけで感心したり、ニヤニヤしたりしているわけなんだけど……。
この前耳にした話には、驚きすぎて思わず話していた北風の子に、
「それ、どういうこと!? もっと教えて!」って迫って怖がらせてしまったんだ。
そのあと散々平謝りして、話の続きを聞かせてもらった。
そうして、教えてもらったことなんだけど。
毎年この町には雪が降る。その最初の雪の中にだけ、北風の神ボレアースの羽が一枚紛れ込んでいるんだって。だけど誰もそんなこと知らないから、羽は雪と一緒に朝日を浴びて消えちゃう。
だけどもし、その羽を手に入れることが出来たら、その者は北風の力を手に入れることになると言うんだ。
僕は北風の子にお願いした。
その日が来たら、必ず知らせに来て、って。
北風の子が僕の部屋にやって来たのは、そういうこと。
僕は絶対にボレアースの羽を手に入れるって、決めたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!