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僕が展望台に到着すると、たくさんの北風たちが渦を巻いて僕を待ち構えていた。
どうやら、北風の子がみんなに知らせたらしい。
風たちは僕を囲んで、珍しそうに口にする。
ーー人間に風の声が聞こえるなんて信じられない
ーー他にも同じような人間がいるのか? 会わせろ!
何には、ーーウチの風の嫁にならないか、なんて。
えっ? ちょっと待ってよ。僕は男だぞ!って、いや、そういう問題じゃない!
僕は風たちの前で、背筋をしゃんと伸ばした。
そして、大きな声で言ったんだ。
「僕は、ボレアースの羽を手に入れたい! お願い、協力してください!」
風たちは大いに驚いて、僕の頭の上で大騒ぎを始めた。
あれは、神聖なものだぞ、人間が手にしていいものじゃない! いや、そもそもあの少年は人間なのか? 我らと話ができるんだぞ!
話し合いがまとまるのを待っていたら、朝になりそうだ。
どこの世界も大人たちの話し合いは長いんだ。
僕は北風の子にこっそり尋ねた。どうしたらいいの? って。
そうしたら、北風の子はあっさり言った。
落ちて来た羽を口でキャッチするんだ、ってね。
羽は雪と同じで、触ったら溶けちゃうから手は使えない。
羽は雪よりもゆっくり落ちてくる。
北風の子がこの展望台に運び入れるから、それを飲み込め、って。
羽は1枚しかない。チャンスは1度きりだ。
僕はドキドキする心臓を飲み込むと、北風の子にガッツポーズをしてみせた。
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