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A「やっぱり……あなたが殺人犯でしたか」
構えたカメラをゆっくりと首元へ戻しながら、彼女は微笑みすら浮かべていた。
B「……初めから、怪しまれているとは思ってたけど」
人気のない公園の一角で対峙した、少女と青年。雪がしんしんと降る中で、緊迫した会話は続く。
A「私のこのカメラの中身……奪いにきたんでしょう」
一歩、後ろに下がりながら、少女はそっとカメラを撫でる。
A「あなたのアリバイ……その時間、県外へ行っていた筈のあなたを写したこの写真で、いっきに崩れてしまうから」
B「…………!」
青年は、その言葉にハッと息を飲んだ。先日この町内で起こったとある女性の殺人事件。その容疑者とされている青年の、絶対的なアリバイ。
A「自転車が趣味、と偽ったのは面白いですね。電車で出かけたのでは切符やIC乗車券の履歴でバレてしまう。自動車でも良かったのに、万が一の道路の防犯カメラの画像解析を恐れたんですか? 自転車ならば、細道を通ることも出来るし、移動履歴も残らない。あとは、現地にいたというアリバイさえ有ればいい」
B「そ、そうだ。僕が県外にいたという証拠! こっちだって、現地で撮った写真をリアルタイムでSNSにも載せてるんだ、偽りようがない……!」
A「去年撮影したものを、そのタイミングで載せただけだとしたら?」
B「……っ!? そ、それは……」
A「もう、止めませんか。こんな小娘でもわかることです。警察だって、いずれは気づく」
B「……いや」
ざり。うっすらと積もった雪の上に、重々しく足音が鳴る。
B「あんたが……あんたとそのカメラが無くなれば、どうとでもなる」
A「……私も、殺すんですか」
B「もう、一人殺したも、二人殺したって一緒だっ!!」
A「……ダウト」
カメラのレンズが、再び犯人に向けられる。
B「何をいまさら写真なんてっ……!」
A「……気づきませんか? この音」
B「なに……?」
しんしんと静まり返った辺りを乱すような、微かなサイレン音が聞こえてくる。
B「な……なんだ!? まさか警察……!?」
A「たった一人で、のこのこ待ってるわけないでしょう」
動揺する犯人をしり目に、カメラのシャッターボタンを押す。
A「動画撮影完了。さっきの告白はばっちり音声録音してありますから、安心してお縄について下さいね」
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