忘れられなくて……

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「俺は真紀にいっぱい思い出をもらったから、今度は真紀が幸せになる番だよ」 私の耳元で康太が囁いた。 私が幸せになる番? 康太がいないのに? 嫌だ、康太行かないで…… カメラから手を離し、イヤイヤと何度も頭を振った。 「真紀、カメラを見て」 康太の言葉にまたレンズを覗く。 天使の姿をした康太が微笑んでいる。 「俺はもう行かなくちゃいけない。 真紀と会えて幸せだった。 それを伝えに戻ってきたんだよ。 真紀、幸せに……」 天使の康太がどんどん薄くなって消えていく。 私は康太が消えてもカメラから手が離せなかった。 ー◇ー◇ー◇ー◇ー あれから半年が経ち、私は休学していた大学に復学し、写真サークルに所属している。 あの日、康太は苦しんでいる私の為に、カメラ越しに姿を見せてくれた。 そして、私に幸せになって欲しいと言ってくれた。 私は康太の思いに応えたくて、最初は無理やり笑顔を作って人と交流を始めた。 だけど今は自然に笑えるし、友達も何人かできた。 これも康太のおかげ。 カメラのレンズを覗けば、あの日の天使の康太が頭に浮かんでくる。 「真紀、頑張ってるね」 きっと康太はそう言って私を褒めてくれるはず。 「(私、頑張って生きてるよ。 康太、ありがとう)」
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