27人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺は真紀にいっぱい思い出をもらったから、今度は真紀が幸せになる番だよ」
私の耳元で康太が囁いた。
私が幸せになる番? 康太がいないのに?
嫌だ、康太行かないで……
カメラから手を離し、イヤイヤと何度も頭を振った。
「真紀、カメラを見て」
康太の言葉にまたレンズを覗く。
天使の姿をした康太が微笑んでいる。
「俺はもう行かなくちゃいけない。
真紀と会えて幸せだった。 それを伝えに戻ってきたんだよ。
真紀、幸せに……」
天使の康太がどんどん薄くなって消えていく。
私は康太が消えてもカメラから手が離せなかった。
ー◇ー◇ー◇ー◇ー
あれから半年が経ち、私は休学していた大学に復学し、写真サークルに所属している。
あの日、康太は苦しんでいる私の為に、カメラ越しに姿を見せてくれた。
そして、私に幸せになって欲しいと言ってくれた。
私は康太の思いに応えたくて、最初は無理やり笑顔を作って人と交流を始めた。
だけど今は自然に笑えるし、友達も何人かできた。
これも康太のおかげ。
カメラのレンズを覗けば、あの日の天使の康太が頭に浮かんでくる。
「真紀、頑張ってるね」
きっと康太はそう言って私を褒めてくれるはず。
「(私、頑張って生きてるよ。
康太、ありがとう)」
最初のコメントを投稿しよう!