はるか遠くにいる君

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俺は読み終わった手紙を丁寧に封筒に戻す。もう太陽は沈みかけていた。信じられなかった。まさかあいつから手紙が届くなんて。それも狙ったように俺がよく行く河川敷に落ちてきたから、かなり驚いた。手紙の最初に書いてあったように、文字はフニャフニャでお世辞にも綺麗とは言えなかった。それでも俺は最後まできちんと読みきった。大事なのは気持ちとよく言うけど、本当にその通りだと思う。 この世界は2つの領域で区切られている。俺たち人間が暮らす地上と天使が暮らす天空。この2つが交わることは決してない。互いに干渉せず、平穏に暮らしていた。だから、あいつが天空から落ちてきたのは本当にありえないことだった。俺もその白い翼を見た時は、夢でも見てるんじゃないかと思った。そのまま素通りすることもできたのに、俺はなぜか声をかけてしまった。面倒ごとは嫌いなはずなのに。俺の声に振り向いた涙でぐしゃぐしゃの顔は今でも鮮明に思い出せる。
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