プロローグ

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 開戦の合図とともに、八秦学園の男子生徒二人が先陣を切って突っ込んでくる。一人は両手の爪が鋭く伸び、鋭利な刃物を連想させる。もう一人は、異様に長い胴から本来の腕とは別に四本の腕が伸び、まるで虫のような風体だ。 「都甲(とごう)」速人は突進してきた男子生徒二人を、近接戦闘が得意な武闘派と判断して仲間の女生徒の名を呼んだ。 「ええ」都甲雫(とごうしずく)は短く答えると、黒い二人の前に踊り出る。異様な八秦学園の生徒の前で、雫は見るからに頼りない。五本の爪を束ねた鋭く硬質な一撃が雫を襲う。 「タイガーキーック!」雫の後方にいたはずの速人は、突如、有名な格闘ゲームの蹴り技を叫びながら、爪男の顎に膝蹴りをくらわしていた。「てめえは俺だ」  速人は「加速」という異能を持った稀人で、自身の行動を高速化することができる。全力で異能を解放したらば、常人では目で追うことは不可能だ。 その一方、速さのまま生身で攻撃してしまえば、異能の速度が上乗せされた自身の攻撃に耐えられず、自分の体も壊れかねないデリケートな異能だ。 今の一撃にしても直前で異能を解除したため、膝蹴りの威力はほぼ速人の身体能力に依存していた。  それにしても爪男にとったら、まさに雫を攻撃しようとした刹那、防御への意識など微塵もない状態で顎にねじ込まれた攻撃だ。後方に勢いよくふっ飛びそのままダウンした。     
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