プロローグ

7/7
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
徐々に紅い光芒は強さを増し、亜紀の瞳を染め上げる。 途端、周囲に張り巡らされ触手のように攻撃態勢だった髪は力を失い、波打ちながら元の長さに戻っていく。 「……ああ。な、なんで。だめ」亜紀は身悶えしながら両頬を赤らめている。その顔は、女だった。  今まで戦っていた相手が急に放ち出した艶っぽさに、速人はごくりと喉を鳴らす。(これはなかなか。って、じゃねえだろ俺!)気合いを入れ直し亜紀へ向かう、がしかし「待て速人」と密が止める。 「彼女を辱めたのは俺だ。だから俺が終わらせる」密と目があったものは色に狂う。 「なるほど。据え膳食わぬは、ってやつか」速人が下卑た笑みを浮かべて頷く。 「男としての責任、ね」九十九を沈めた雫が腕組みして観戦していた。 「二人ともうるさい」密は二人をきっとにらんだ後、亜紀の正面に歩みを進めた。 「だめ、近づかないで。お願い」亜紀は自分の淫欲の対象が急に近づいてきて、激しく動揺している。 「大丈夫。俺は自分の欲望のためにはこの異能を使わない」密は力強くそう言うと、亜紀の後ろ首を手刀で素早く打って気絶させた。膝を折る亜紀を優しく抱き留め、ごめんと呟く。 「勝負あり!」審判が密達の勝利を宣言した。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!