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アルバムの中の誰か 3
白衣がひらめいて彼が振り返ったその瞬間、轟音と共に、家の上半分が吹き飛ばされた。彼が目を剥いて、僕の上に覆いかぶさろうとする。二回目の攻撃まで、間があることを期待したが、彼の必死の表情は次の轟音と共に消え去った。
全集本も宝石も、ベッドも戸棚も鏡も、ありとあらゆるものが吹き飛ばされて攪拌されたが、僕自身はバラバラにならずにすんだらしい。一度目の砲撃で、僕の上に崩れ落ちてくるはずの物が、全て吹き飛ばされていたからだろう。おかげで、わずかな瓦礫を払いのけるだけで立ち上がることができた。
周囲を見回すと、一面の瓦礫の山と、転がるいくつもの体、そこから流れ出した血や汚物――四方に死と喪失が充満していた。銃に吹き飛ばされたという僕の感情が、空の彼方で悲しんでいるのかもしれないが、僕のAIは沈黙を守っていた。
気が付くと、僕の回りには人だかりができていた。
「ルニ様、生きていらしたのですね」
「ルニ様、どうか我々に導きを」
「ルニ様、奴らに裁きを」
「ルニ様」
「ルニ様」
「ルニ様」
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