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「これじゃあ、君を幸せにできないね」
あなたはそう言って
私を強く抱き締めた。
「ううん。一緒にいられるだけで幸せよ」
私はそう言って
あなたの身体を温めた。
あなたから零れた涙は
私の肩にぽたぽたと落ちて
冷たく湿っていく。
私も気づけば泣いていた。
私から零れた涙は
あなたの肩にぽたぽたと落ちて
温かく湿っていく。
「私、あなたのところに行こうかな」
「ダメだよ。君がおばあちゃんになるまで、ずっと待ってるよ」
「待てない。早く一緒になりたい。あなたのお嫁さんになりたい」
「ごめん。この指輪は、もう意味がないんだ」
あなたは、笑って言った。
けれど、どこか寂しそうだった。
相変わらず、嘘が下手なんだから。
私は唇を尖らせて、あなたを見つめた。
「じゃあ、あなたと同じところに行けば、指輪の意味は変わらないでしょ」
あなたは
困った顔をして私を見た。
「もうあの頃の僕じゃないんだ。早く指輪なんか捨てて、僕のこと忘れてよ」
そう言って笑うあなたの瞳から
涙が溢れていた。
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