スケッチブック

1/4
34人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ

スケッチブック

あれ? 今日はメガネかけてる。 「コウイチロウ、メガネなの?」 「悪いか? コンタクト切らしたんだよ。なかなか店空けらんないからなぁ」 「うこ、店番してるよ? 行ってきたら?」 コウイチロウはメガネの奥の目でわたしをじっと見て首を振った。 「いつ雨止むか分からん」 ふー、わたしを信用していないだけでしょ。でも、コウイチロウのメガネも好き。 たまにはコウイチロウの絵描こうかな。 そう思ってスケッチブックをめくれば、それが最後のページで、茶色の硬い裏表紙に行き当たった。 「コウイチロウ大変! スケッチブックが終わっちゃった! 雨止んじゃうよっ。新しいのちょうだい!」 スケッチブックを抱いてコウイチロウの所に走る。 「今は無い。今度買っとくから」 「今描きたいのに……」 「しゃぁねぇなぁ」と言いながらコウイチロウが棚をゴソゴソとあさっている。 「これまだ何枚か白紙残ってるから、これ使え」 コウイチロウは使いかけのスケッチブックを出してくれた。 「ありがとう!お礼にコウイチロウ描いてあげるよ」 「いらねー」 わたしはご機嫌でスケッチブックをめくった。     
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!