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やっべ。雪がひどくなる前に戻らないと。
俺はコンビニへ走り、肉まんとあんまん、コーヒーとコンポタを大急ぎで買った。ダッシュで公園へ戻る。
「……嘘だろ……? いない……」
さっきまで池のほとりに立っていた彼女の姿が見えなかった。雪のせいか、それとも『アシスタント失格』という烙印が見せる絶望のせいか、視界が真っ白になる。
「こっちこっち!」
しかし、倒れそうな俺を救ってくれたのは、元気そうな彼女の声だった。声のする方向に顔を向ければ、近くの東屋で彼女は手を振っていた。
……そういえば、あそこを休憩地点及び荷物置き場にしていたんだった……。
「村上くんって、いっつも用意周到だね」
木のベンチに俺が持ってきた座布団が敷いて、彼女は座っていた。座りながら、俺のバッグからレジャーシートを取り出す。無言でそれを手渡されたのだが、広げて、というのが『できるアシスタント』には伝わった。コンビニの袋と交換する形で受け取る。
「あんまん、買えた?」
「うん。ラス1だったけど」
レジャーシートを広げ、風に飛ばされないように四隅に石を置いていく。そんな俺の耳に、「良かった、うふふ」と笑う彼女の声が届く。
……え?
見やれば、あんまんを前に、ニコニコと笑う彼女の姿。
「良かった~。あんまんが残ってて。これって人気商品でしょ? たいてい売り切れてるんだよね」
「……へ? そうなの?」
てっきり俺は、あまり売れないから、あえて置いてないんだと思っていた。
「そうだよ。だって、温かいお饅頭ほど、この世の中で一番美味しい物はないんだから」
温かいお饅頭……あ~……言われてみれば、あんまんは蒸した饅頭か。
突然のことに呆然とする俺の前、笑顔の彼女はぱくっとあんまんに齧りついた。
「ん~っ、おいし~~っ。幸せ~~~~」
幸せオーラをまき散らした後、再びあんまんに齧りつく。そして、口にそれを咥えたまま、コンポタのプルタブを器用に開ける。あんまんを片手に、コンポタに口をつける彼女。表情がうっとりとしたものに変わり、彼女の姿がさらに眩しくなる。
「はあ……。甘い後のしょっぱい……至福……」
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