天使と悪魔

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 そういうわけで、私は地面と仲が良く、いつも下を向いて歩くことになる。思い返す限り、もう長い間空を見上げたことなんてない。せいぜい大雨が降った時、厚い雨雲が埋め尽くすどんよりした暗い空ぐらいだ。 「よかよか。地面にも面白いものはいっぱいあるっちゃ。マンホールとか」    唯一の友人であり、師でもあるトメ子さんはそう言って甘やかしてくれるので、私の下向き加減が治ることはない。このままだと頭が地面に突き刺さって逆「V」になるのではというぐらいの磨きっぷりだ。 「それよりこの間の神回見たと? バナム様、美しすぎたっちゃー」 「見た見た。でも断然私はカミエ様の方が美しかったけど」 「ほんま有里はカミエ推しやね。女なのに女キャラ好きとか変わりもん。うちは好かん。これ以上バナム様に近づかんでほしいわぁ」  私達が話しているのは、今一番乗りに乗ってきている神アニメ『天地界戦』についてだ。天使と悪魔の戦いで、バナム様は悪魔、カミエ様は天使なのだが、種族、敵味方を越えた愛を美しいイラストと話で描いている神アニメだ。  トメ子さんと軽く三時間程天地界戦について語り合った後、用事があるというので解散することになった。まだ昼過ぎだが、仕方なく家に帰ることにする。
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