グッバイ、ミスター

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(喉が渇いた…)  シンプルで強い欲求が、宗吾を満たす。  それまで視界を占拠し続けていた砂漠の風景が、急速に薄まっていく。 (アイスコーヒー、飲みたいな…)  ここで、彼の意識は暗い砂漠から切り離された。 (あの店のアイスコーヒー、うまかったな…苦味強めで、頭もスッキリできた)  宗吾は、コーヒーショップの中に立つ自分を見つけた。  それは店員が飲食の世話をするのではなく、先にレジで注文を完了させた商品を客自身が席まで持っていくタイプの店だった。 「いらっしゃいませ」  カウンターの向こうにいる店員が、宗吾に笑顔であいさつする。  その笑顔を見た彼は、静かな口調でこう返した。 「アイスコーヒー、ひとつください」 「かしこまりました。少々お待ちください」  店員は、すぐにアイスコーヒーを提供する準備にとりかかる。  宗吾は幻影を見ていた。  それは彼自身が生み出した想像だった。  暗い空と砂ばかりの現実から逃れるために、彼は想像の世界に自分を置いていた。  そうしなければ耐えられないほど、現実は乾燥していた。 (あの子、女子大生くらいだろうか…)  宗吾は、手早く準備を進める店員を見つめる。  その表情は柔らかい。     
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