1 廃校舎の花子さん (1)

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1 廃校舎の花子さん (1)

 就業時間はとうに過ぎた。しかし職員室には多くの職員が残っていた。皆、要領が悪いわけではないのだが膨大な雑務に追われて中々帰宅できないのだ。  新任の頃は生徒と教師という関係のみで成り立っている職業であると思っていたが、教卓で数式や定義を教えるだけでは足りないのだ。研修会に出てレポートを提出したり、学校運営における細々とした仕事など数え切れない。純粋に教師という使命を果たそうとしていた自分は、この現状に嫌気がさしていた。  僕の求めるものとは違う。  目指して、思い描くものとはかけ離れていた。  次第に現実と理想とのズレに折り合いをつけるため、僕は少し考え方を改めた。教師とは一つの職業であり、尊敬される職種ではない。昔のように教師を敬わない生徒や保護者も同じように考えているだろう。崇高な使命を深く自覚しなければならないなど、いったい誰が言いだした。時代遅れもいいところだ。現代において、そんな価値観が通用するはずがない。    学校は単なるビジネスの場である、オフィスには生徒という名のお客様、パトロンはその親達である。金を我が社に投資してくださる保護者様にはサービスを提供しなくてはならない。       
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