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厭きたから、斜め向かいの公園に天体望遠鏡を向けた。
僕の自宅の前は雑木林で右横に公園がある。
夜になると恋人達が出現するのだが……、いや、別にそういう覗き見趣味的な感じで、天体望遠鏡を買ったわけではないんだけど、高校一年生、彼女なしの身の上では、興味が湧いて眺めてしまうのも仕方ない。
と言い訳して、焦点を合わせる悪い僕でありました。
でも今夜は、不思議な事に恋人達が確認できない。
こんなロマンチックな夜なのにね。
――そっか、夕方まで、雨が降ってたんだ。公園内はかなりぬかるんでいるんだろう。
そう気付いて、天体望遠鏡をゆっくり左右に流した。
あれっ、あの子。ひとりで何してんの?
僕の眼は彼女に釘付けになった。
キッチリ焦点を合わせる。
公園の中央辺りは広場になっていた。周囲の木々が疎らなため、一定間隔で置かれたベンチがよく一望できる。
彼女は天を仰いでいた。
顔立ちはまだ、確認できない。
何歳ぐらいなんだろう?
僕と同じくらい?
すごく気になるけど、うーん……、行ってみるかな。
しかし、怪しまれるかも?
そうだ、天体望遠鏡を持って行こう。で、月の観測を、ってことで、いや、却ってあぶないヤツって思われるかもしれないけど――。
結局、好奇心の方がまさり、公園に出かけてしまった。
無論、天体望遠鏡も一緒だ。
そして、天体好き真面目少年という仮面かぶって、王子様は旅に出発しました、とさ。
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