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第1章 出会い
ぼくは生前のひいじいちゃんに会ったことがない。
お母さんやばあばからひいじいちゃんが生きていた頃の思い出話を聞いたりするから少しはどんな人かはわかる。
茶目っ気があってちょっとおどけたりするのが好きで、絵を描くのが上手で歌を歌うのが好きらしい
病院のラウンジでよく歌ったりしていてお母さんやばあば、職員さんを驚かしていたんだって。
ぼくがなんで生まれる前に亡くなったひいじいちゃんのことがこんなにも気になるのか知りたい?
それはね、3日前のあの夜からなんだ。
あの日、ぼくはトイレに起きたついでに喉がかわいて居間にいったんだ。
そしたら窓の隅っこに白い光がぼうっと見えたから
こわごわ近づいたら背の低いおじいちゃんが立ってこっちを見ていたんだ。
「こんばんは君はユウマだね?」
そう、ぼくはユウマというんだけど、どうしてこの人はぼくのこと知ってるんだろう?と首を傾げていると、その人はゆっくりと近付くとしゃがんだ。
「どうして知ってるのかって顔だね、わしは君のおじいちゃんだからさ」
「じいじならもういるよ」
「いや、おじいちゃんのおじいちゃんだ」
「ひいじいちゃんなの?」
「おお、正解だよ。よくわかったね」
「えらい?」
「うんうん、えらいぞ」
と、頭をわしゃわしゃ撫でられてくすぐったい気持ちになった。
「そういえば喉が渇いたんだが何かないかな」
「麦茶ならあるよ」
ぼくは少しだけ緊張していてポットがゆらゆら揺れちゃったけど、ひいじいちゃんはにこにこしていた。コップをことりとおくと、中は空っぽだった。
「ありがとう、ごちそうさま」
「帰っちゃうの?」
「うん。もう時間だからね、また来るからな」
待って、とひきとめようとした僕の右手は
むなしく空中を仰いだ。あたりは真っ暗でとても静かだった。
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