第2章 真夜中の客

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「行ってきまーす」 と昨日より元気に家を出た。今日は五時限までだからいつもより早い。僕は金曜日が大好きだ。金曜が終われば明日は土曜日、休みなのだ。考えられるだけでワクワクする。 校門の前までいくと、いつも戦いごっこして 遊んでいるダイキとトラオがこっちに手を振っているのが見えた。 「おはよ、ユウマ!今日遅かったね」 「ごめん、ちょっと寝坊しちゃって」 トラオがいつも通り、ランドセルをぶつけてきたり反対側からはダイキがどっかから拾った棒切れを刀のように構えている。これが朝のいつもの風景だけど、登校前の生徒が来るからっていつも先生に止められるんだ。おもしろいのにな。 休み時間になり、わーっと皆で追いかけっこをする、でも見つからないように逃げるのが大変。僕は足が遅いからすぐつかまっちゃうしね。 給食後、憂鬱な時間がやってきた。 掃除の時間だ。廊下にひとりでいるときに いつもおもしろがって僕を蹴ってくる女子が いてなかなかしつこい。そして痛い。毎日なので、お母さんに相談したらそれはひどい!と珍しく怒っていた。 やめてといってもやめてくれない、誰もいないときにやってくるから証拠がないといえばない。どうしてぼくなんだろう、八つ当たりはやめてほしいなぁと今日もちょっと疲れて家に帰った。お母さんはまだ仕事から帰ってないので、暇だし朝、録画していた朝ドラを見る。 ドラマにでている人って、本物の人がやっていて死んでしまった人はほんとにいなくなったり泣いてる人はほんとに泣いてるのかとぼくは思っていた。それがお芝居で「はいゆうやじょゆう」という人がその役になりきってると教えられてもよく分からなかった。 でも、ユウマの人形劇や学芸会と同じだよと言われてちょっと分かった気がした。 今日もおもしろかったなと、テレビを消して ぼんやりしているときのうのひいじいちゃんの言葉が頭に浮かんだ。また来るからな、とひいじいちゃんは言ってた。嘘かも知れないしほんとかもしれないそう思うと、夜が待ち遠しくなった。 まわりが寝静まる深夜、ぼくは目がさえてしまい、むくりと起き上がると居間へと足を運んだ。期待と不安で心臓がドクドクなっているのが分かる。会いたい人はそこにいた。
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